その日私は、薄暗がりが続く細い路地を歩いていた。
9月も終わりに近づくと日が落ちるのも早く、田舎の街の、ところどころの電柱にポツポツと点く街灯が、辺りを頼りなげに照らしているだけである。
この近くには高校があり、いつも日が暮れてから、部活帰りの学生が自転車をこいで帰路を急ぐ姿を見かけていた。今日もちょうどそんな時間帯である。
「キャ――――――!!!!!!!」
静寂を破り捨てるかのような、突然の叫び声が聞こえたのはその時だ。
なにがあったのだろう。
私は反射的に、その声のした方へ走り出した。
走りながら、しまった、スリッパをはいている、などと思っていた。
息急きたどり着いたその場所には、果たして、二人の女学生がうずくまっていた。
とっさに、握りこぶしに力が入る私。
『敵』はどこにいる!?
しかし・・・次によく見ると。
二人の学生は、なにかを拾っている様子だった。
地面には、無数にばら撒かれた「グミ」
グレープ味のようだ。
・・・きびすを返した私は、心の中でこうつぶやいた。
「お菓子こぼしたくらいでいちいち叫ぶな。」